この夜を越えて、静寂。

瞳の話


 ふと感じた違和感に、私は双子をまじまじと見てしまった。
 彼らは私の視線に気づいて、どうしたのだろうと揃って首を傾げた。
 その余りにも“いつも通り”なふたりに、私の視力がおかしくなったのかと一瞬考える。
 けれど、隣にいた私の相棒たる堕天使も、ぎょっとした顔で双子を凝視していたから、視力は正常なのだと理解する。
 ……すなわち、それは、彼らが“異常”であると認めざるを得ないわけなのだが。

「……お前ら、その瞳……」

 ソレイユ堕天使が掠れた声で双りに問う。双子は笑う。きれいに、笑う。
 夜くんの青い瞳も、朝くんの赤い瞳も。

 ……片方が、紫色に、なっていた。

「お兄ちゃんとね」

 夜くんが吐き出す。
 
「お揃いにしようと思ったんだ。それで、交換してみたんだけど」

  弟の後を継いで、兄が語る。

「色が混ざっちゃったんだよね。まあ、これはこれでいいかって結論になったんだけど」

「お兄ちゃんの色、欲しかったなあ」

 双りは笑う。ころころと、笑う。
 ひゅっと、息を呑んだのは、私かソレイユか。
 かける言葉も見つからず、私は彼らから視線を外してしまった。

 だって、こんなの、あんまりだ。

 彼らの傷は、彼らを歪め、執着を異常へと導いた。私たちはそれを知りながら傍観した。
 だから私たちはそれを糾弾できない。おかしいと、異常だと、言えない。

「きれいでしょ?」

 無邪気に笑う夜くんを、跳ね除けられない。
 幸せそうな双子を、拒絶できない。

 ……ああ、そうか。

 ――私たちも、とっくに異常だったんだ。