幻想龍、神剣と少年。

第二夜 闇に溶け込む鎮魂歌


「その世界には闇を抱く歌神がいた。

 神にあるまじき、闇を抱く歌神がいた。

 

 嗚呼、それ故彼は【神】として

 認められなかったのだ……――」

 

 

『これは、そんな僕と仲間の物語』

 

 

 僕は歌う 死への旋律

 どうすればいいのかも わからぬまま。

 僕は歌う 絶望の旋律

 どうすればいいのかも わからぬまま。

 

 

「【神】と認められなかった歌神は

 神の国、【神界】を旅立った。

 同行者は、幼なじみであり唯一の友

 時神と想神のみ」

 

 

『ただ、僕の中の闇を消す為に。

 そうすれば【神】になれると

 僕らは信じていたのです』

 

 

 冷たい月が嗤う夜も

 寂しい太陽が嘆く朝も

 仲間は傍にいてくれた

 いつもいつも、励ましてくれた

 

 

『【神】になどなれなくてもいい。

 ただ僕は、みんながいてくれたら』

 

 

 嗚呼 されど 星は残酷な未来しか

 僕らに与えてくれなかった!

 

 

「旅をする歌神たち。

 色んな景色の中で見つけた、大切なモノ。

 

 けれど全能の神は、それすら赦さずに……」

 

 

『全能神が僕らを追ってきました。

 仲間たちは、僕を庇い……』

 

 

 僕は歌う 死への旋律

 どうすればいいのかも わからぬまま。

 僕は歌う 絶望の旋律

 どうすればいいのかも わからぬまま。

 

 

 紅い紅い液体が海を創り

 僕の仲間を紅く染めていく

 全能神はそれを見て 嗤う、嗤う、嗤う

 最期に時神(しんゆう)は叫ん、だ

 

 

『逃げ……ろ……!! ルト!!』

 

 

 泣きながら 泣きながら

 ただひたすらに走る僕は

 何処へ往けば良いのかも わからぬまま

 血に塗れた仲間の遺志を 想い 全てを

 捨て去ることすら出来ずに

 嗚呼 宵闇よ、僕を隠して……!!

 

 

 冷たい月が嗤う夜も

 寂しい太陽が嘆く朝も

 仲間は傍にいてくれた

 いつもいつも、励ましてくれた

 

 泣きながら 泣きながら

 ただひたすらに走る僕を

 慰めてくれる 抱き締めてくれる

 仲間たちは もう……

 

 

『あぁぁぁあぁぁああぁぁッ!!』

 

 

『僕は

 生まれてきてはならなかったのです。

 大切な人は皆 命を落としました』

 

 

 冷たい月が嗤う夜も

 寂しい太陽が嘆く朝も

 仲間は傍にいてくれた

 いつも、いつも……

 

 みんながいてくれれば

 それだけで、よかったのに。

 

 

 過去の記憶に涙する僕は

 一人の少年に出逢った

 

 

 その手には、【神剣】――

 

 

『ああ……僕を殺して……【神殺し】』

 

 

 それは救済の光、贖罪の痛み

 仲間の想いを捨て去るとしても

 それでも、僕は。

 

 

『みんなのいない世界なんて、耐えられないから』

 

 

 全てが紅に染まる中

 僕は仲間たちの姿を……――